当事務所の林大悟弁護士、が平成25年10月17日、町田区検察庁において、窃盗事案に関して不起訴処分を獲得しましたのでご報告いたします。

事案の概要:窃盗で執行猶予判決を受けていた70代の女性が、執行猶予期間満了後間もなくして、ドラッグストアで万引きをした事案。逮捕・勾留された身柄拘束事件。
執行猶予期間満了後間もない犯行であったことから、起訴される可能性が高く、また、起訴されれば実刑判決を下されてしまう恐れがあった。

 医師の診断によると、被疑者は、ウェルニッケ・コルサコフ症候群に罹患していた。この症候群はビタミンB1(チアミン)の不足によっておこるウェルニッケ脳症とその後遺症であるコルサコフ症候群のことを意味する。
被疑者はアルコール依存症に罹患していたため、ビタミンB1(チアミン)が不足している状態であったことから、ウェルニッケ・コルサコフ症候群に罹患したと思われた。そして、この症候群の症状として、記憶力の著しい低下、認知機能の低下が挙げられる。被疑者の本件犯行も、この症候群が明らかに影響を及ぼしており、心神喪失又は心神耗弱状態であったのではないかとの疑いがあった。
また、再発防止のためには、被疑者に対して、上記症候群の原因となったアルコール依存症及びクレプトマニアの治療が必要であった。

 そこで、林が専門の医師に連絡をとり、治療に必要な環境を準備した後、捜査担当検事に対して、下記の内容を記載した意見書を提出した。

・被疑者はウェルニッケ・コルサコフ症候群に罹患しており、本件犯行が心神喪失又は心神耗弱状態で行われたものであること。
・被疑者に必要なのは治療であり、その治療環境も整っていること。
・刑事施設では十分な治療が行えないこと。

 上記の意見書により検察官を説得した結果、不起訴処分となった。

ご本人の回復を期待しております。