当事務所の林大悟弁護士が第118回日本精神神経学会学術総会シンポジウム【盗癖に対する治療と司法的問題】において、弁護士の立場で【盗癖に対する司法的問題】と題して発表をする機会を得ました。
この発表では、主にクレプトマニア(窃盗症)の責任能力に関して、クレプトマニアの症状の程度=責任能力の程度という私見について説明を致しました。
会場内での質疑応答では、
1基本的に林の意見に賛成であるが、精神病かどうかで責任能力の結論に差が出ている現状をどう考えるか
2クレプトマニアの責任能力に関して林説に立つとしてクレプトマニアの重症度に関する尺度はあるのか
3摂食障害やPTSD、うつなどの他の精神障害を捨象して、純粋にクレプトマニアという人はどのくらい存在するのか
といった質問がありました。
1については、精神医学が他の医学の分野と同様に【自然科学】であるというならば、100年前から伝統的に決まっているという説明で統合失調症や器質性の障害以外は責任能力があるという議論は科学的では無くおかしいと私見を述べました。質問された医師は頷いておられました。
2については、私見を述べた後、海外の文献があることをお話ししました。今の引き受けた鑑定に有益な情報を得られたと質問者の医師は喜ばれていました。
3については、例えば、友人と非行の一環で万引きをしているうちに他の友人は万引きを卒業したのに、一人取り残されて盗癖が形成され、やめたくてもやめられない状態になれば、純粋なクレプトマニアの一例になると回答しました。ただ、裁判ではクレプトマニアはそれ自体として有利にならない傾向があると説明しました。質問者の医師は頷かれていました。
以上のとおり、一般の精神科医もクレプトマニアには非常に高い関心を有していることが分かりました。