平成28年(わ)第233号高知地方裁判所平成29年8月7日判決
・事案の概要:前刑(万引き)の保護観察付き執行猶予判決後、1年も経過していない間に果物屋において、ぶどう等4点(販売価格合計1160円)を万引きした犯行時69歳の女性による同種万引き再犯事案です。起訴前から林大悟弁護士が弁護人を担当し、差戻前の高知地裁は弁護側の鑑定請求を却下し、懲役8月の実刑判決を言い渡しました。弁護側の控訴を受け、平成28年(う)第64号高松高裁平成28年6月21日判決は、鑑定請求を却下した原審裁判所の訴訟手続きには、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるとして原判決を破棄、高知地裁に差し戻しました。そして、差し戻し後の高知地裁で行われた鑑定により、被告人は犯行時に軽度のアルツハイマー型認知症に罹患していることが明らかになりました。差戻審は、被告人は、本件犯行当時、心神喪失や心神耗弱の状態にまでは至っていなかったものの、その判断能力は、アルツハイマー型認知症により大きく低下していた疑いがあり、これが本件犯行に相当程度影響を与えたことを否定することはできない等として、懲役の実刑を回避しました。
・弁護の結果:罰金50万円
鑑定請求を却下した原審判決を訴訟手続きの法令違反があるとして破棄差し戻しをし、被告人に対する懲役の実刑を回避する可能性を与えてくれた高裁の裁判官や差し戻し後に被告人の疾病性が犯行に与えた影響の程度を考慮して罰金刑を言い渡した差戻審の裁判官に感謝いたします。被告人は同居する家族や主治医の支えもあり、もう二度と社会に迷惑をかける万引き行為はしないものと期待しています。