当事務所は、クレプトマニアを専門的に取り扱う法律事務所です。窃盗事件の中でも、クレプトマニアは特殊な分野であるため、精通している弁護士は少ないのが現状ですが、当事務所は、知識、経験も豊富で、多くの実績を挙げています。
なお、当事務所はクレプトマニア案件について全国対応しております。
↓※下記のページで逮捕から起訴されるまでの手続について動画で解説しています。
動画解説:逮捕から起訴されるまでの手続について
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高齢者の万引きについて
クレプトマニアとは何か
ここではまず、「クレプトマニアとは何か」について御説明します。
クレプトマニアを日本語に訳すと「窃盗癖」又は「窃盗症」になります。なお、国際疾病分類(ICD-10)では、「病的窃盗」と記載されています。これは「盗みを止めたくても止められない」という精神障害です。
この「盗み」の態様はほぼ全て万引きです。したがって「万引き依存症」と言っても良いでしょう。
クレプトマニアは、アメリカの精神疾患の診断基準であるDSM-5(2013年)において,「窃盗症」と記載されている精神疾患の1つです。DSM-5におけるクレプトマニアの診断基準は、次の5つです。
A 個人的に用いるのでもなく、またはその金銭的価値のためでもなく、物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される。
B 窃盗におよぶ直前の緊張の高まり。
C 窃盗を犯すときの快感、満足、または解放感。
D 盗みは怒りまたは報復を表現するためのものでもなく、妄想または幻覚に反応したものでもない
E 盗みは、行為障害、躁病エピソード、または反社会性人格障害ではうまく説明されない。
ただし、ここで示されている基準は、1つの目安ではありますが、絶対のものではありませんので注意が必要です。クレプトマニアにあたるかどうかは、専門医の診断を仰ぎましょう。
クレプトマニアとはどのような特徴がある病気なのか
次に、「クレプトマニアとはどのような特徴がある病気なのか」について御説明します。
第1は、男女比では圧倒的に女性が多いという点です。
第2は、クレプトマニアは他の精神障害を合併することが多く、中でも、過食症、拒食症といった「摂食障害」を抱えている人が多いという点です。専門医の論文でも、摂食障害の1つの症状として窃盗癖が挙げられていることからもこの点は明らかです(ただし、狭義の意味でのクレプトマニアと摂食障害患者の盗癖との関係については、摂食障害学会の専門家と嗜癖行動学会の専門家との間で説明の仕方が異なることもあります)。
第3は、「真面目で良い子」ではあるが、家族関係にトラブルを抱えている人が多いという点です。裕福な家庭に育ち、親のしつけをよく守ってはきたが、親に対する不満を内に抱えているという例が多くあります。
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弁護活動方針
では、このようなクレプトマニアの方について、当事務所ではどのような方針に基づいて弁護活動を行っていくのか、この点について御説明します。
クレプトマニアの特徴の第2として挙げましたように、クレプトマニアは摂食障害の1つの症状となっていることが多いという点があります。したがいまして、摂食障害を抱えている場合には、その治療を行うことが何よりも大切で、摂食障害が治っていけば、窃盗行為も治まる可能性が高いといえます。
また、クレプトマニアの方は、「盗み(万引き)を止めたくても止められない」という点に障害を抱えていますので、刑罰の威嚇によって犯罪を思い止まらせたり(刑罰の一般予防効果といいます。)、刑事施設に収容して改心させる(刑罰の特別予防効果といいます。)といったことでは再犯防止の実効性は得られません。
このようなことから、弁護の方針としては、まず、「刑罰よりも治療を優先すべき」と考えています。したがいまして、刑事施設に収容されることなく、治療に専念できるように司法機関や警察機関に働きかけるのが、中心的な弁護活動となります。
そして、クレプトマニアのご家族の方には、本人の回復のために、寄り添っていただけるように御協力をお願いすることになります。
クレプトマニアは、心に病を抱えた方ですので、ご家族の方など身近な人からの愛情あふれる支援が何よりの治療薬となります。
回復のための環境整備の全体像を以下に示します。
お悩みの方へ
当事務所の弁護士も、ご家族の方とともに本人に寄り添い、本人が回復し、再び社会に戻って健全な生活を送れるように全力を尽くして支援いたします。当事務所のコンセプトは、依頼者様の心の平穏を取り戻し、癒しを与えることですので、「盗み(万引き)を止めたくても止められない」とお悩みの方は、是非一度、当事務所にご相談ください。
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当事務所の解決実績
1 無罪事例
・50代の男性がゲームソフト等販売価格合計4万5530円の品々を万引きしたが,弁護活動の結果,犯行当時,NCSE(非けいれん性てんかん重積nonconvulsive status epilepticus)を起こしており,行動制御能力を欠いていたとして,無罪となったケース。
2 心神耗弱事例
・神経性無食欲症及び低酸素脳症による認知症の状態にあった30代の女性が,スナック菓子等合計1810円を万引きしたが,弁護活動の結果,心神耗弱を認定の上,服役経験のある被告人に対しては異例の懲役7ヵ月の判決となったケース。
3 保護観察付執行猶予中の再犯事案(罰金)
・前刑(万引き)の保護観察付き執行猶予判決からわずか2ヶ月後にスーパーマーケットにおいて,菓子等食品25点(販売価格合計4064円)を窃取したとして起訴された摂食障害とクレプトマニアに罹患した40代女性の同種再犯事案が,弁護活動の結果,罰金50万円の判決を獲得(検察官の求刑 懲役1年6ヶ月)したケース。
4 再度の執行猶予事例
・前刑で窃盗罪(万引き)により懲役10月3年間執行猶予の判決を受け,わずか10ヵ月あまりの執行猶予期間中の万引き再犯事例が,弁護活動の結果,懲役1年執行猶予5年保護観察付きの判決を獲得ができたケース。
5 不起訴事例
※すべて前科のあった事例であり、通常であれば起訴を免れないか、起訴になる可能性が高い事案です。しかし、当事務所の林大悟弁護士の弁護活動の結果、いずれも不起訴となっています。
①東京・主婦・20代後半の女性
直近前科 | 懲役1年執行猶予3年 |
病状 | 摂食障害+薬物依存症+うつ病+窃盗癖 |
事案の概要 | 執行猶予中に万引きで検挙 |
弁護活動の結果 | 不起訴 |
②埼玉・主婦・73歳の女性
直近前科 | 懲役1年執行猶予3年 |
病状 | うつ病+窃盗癖 |
事案の概要 | 執行猶予中にスーパーで食料品を万引き |
弁護活動の結果 | 不起訴 |
③群馬・無職・20台前半の女性
直近前科 | 懲役1年執行猶予3年 |
病状 | 摂食障害・アルコール依存症・窃盗癖 |
事案の概要 | 猶予中にスーパーで食料品を万引き。 |
弁護活動の結果 | 不起訴 |
④東京・医師・30台前半の女性
直近前科 | 罰金20万円 |
病状 | 摂食障害+窃盗癖 |
事案の概要 | コンビニでペットボトル等を万引き。不起訴後に再度、コンビニで菓子パン等12点を万引き。翌日の午前9時までに専門医の意見書を作成してもらえるように依頼。深夜、接見に行き、仮眠後、意見書を30分で作成、専門医との意見書とともに東京地裁にFAX。検察官の勾留請求は却下された。その後、再度の不起訴を獲得。 |
弁護活動の結果 | 不起訴 |
⑤東京・主婦・60歳の女性
直近前科 | 罰金 |
病状 | うつ病+窃盗癖 |
事案の概要 | 万引きで検挙 |
弁護活動の結果 | 不起訴 |
⑥東京・無職・30代の女性
直近前科 | 懲役の実刑判決 |
病状 | 摂食障害(ブリミア・ネルボーザ:ビンジ食いと自己誘発嘔吐を伴う)+窃盗癖(クレプトマニア)+気分変調性障害(最初診時にはSDS『自己記入式抑うつ尺度』64点で重度抑うつと判定) |
事案の概要 | 繰り返す万引き問題を治療する目的で主治医と相談し、特に起訴前弁護や公判での情状弁護をせず服役を選択。しかし、出所後3ヶ月も経たずに再犯。服役後の再犯から林大悟弁護士が弁護担当。1.スーパーで食品等37点(7262円相当)万引き(さいたま地検)2.デパートで食品7点(6120円相当)万引き(東京地検)3.コンビニで食品等6670円相当万引き。H23.10.4 コンビニで食品等6853円相当万引き。同日コンビニで食品等7495円相当万引き。同日 コンビニで食品等1496円相当万引き(旭川地検)。4.コンビニで食品等25点(8849円相当)万引き(東京区検)※その他、入院時に他患の財布から5000円を抜く行為をした件について、不送致処分となった。 |
弁護活動の結果 | 不起訴 |
⑦愛知・30代の女性
直近前科 | 万引きで執行猶予3年 |
病状 | 摂食障害+クレプトマニア(窃盗癖) |
事案の概要 | スーパーで万引き |
弁護活動の結果 | 不起訴 |
⑧東京・30代の女性
直近前科 | なし。万引きの前歴はあり。 |
病状 | 摂食障害+クレプトマニア(窃盗癖) |
事案の概要 | スーパーで万引き |
弁護活動の結果 | 不起訴 |
⑨東京・70代の女性
直近前科 | 執行猶予判決 |
病状 | アルコール依存症+クレプトマニア(窃盗癖)+ウェルニッケ・コルサコフ症候群 |
事案の概要 | 執行猶予期間満了後間もなくドラッグストアで万引き |
弁護活動の結果 | 不起訴 |
⑩山梨・30代の女性
直近前科 | 常習累犯窃盗実刑判決 |
病状 | 摂食障害+クレプトマニア(窃盗癖) |
事案の概要 | スーパーで総菜等を万引き |
弁護活動の結果 | 不起訴 |
⑪兵庫・女性
直近前科 | 常習累犯窃盗 |
病状 | 摂食障害、アルコール依存症、クレプトマニア(窃盗症)等 |
事案の概要 | スーパーでの食品万引 |
弁護活動の結果 | 不起訴 |
⑫東京・30代女性
直近前科 | 窃盗罪の保護観察付執行猶予判決 |
病状 | 摂食障害、クレプトマニア(窃盗症) |
事案の概要 | 保護観察付執行猶予中にスーパーでの食品万引 |
弁護活動の結果 | 不起訴 |
7 大幅な減刑事例
①横浜地方裁判所第6刑事部平成23年(わ)第625号,2171号窃盗被告事件,平成23年9月21日判決。
・事案の概要:前刑で2年間服役してから5年以内の再犯であり,法律上執行猶予不可能な事案であった。当初,在宅であったが,裁判中に別件の万引き事件を起こし,逮捕勾留後に追起訴された。その結果,本件は,2件の万引き事件の併合事件となった。
・弁護活動の結果:裁判所は,懲役刑を選択し,刑期の点で被告人の神経性食欲不振症ないし窃盗癖を考慮,懲役2年の求刑に対し,懲役1年2月・未決勾留80日を刑に算入した(求刑の5割8分)。受任後から判決まで寄り添ってきた弁護人の実感としては,当人の治療意欲はかなり高まっているように思えた。裁判官も最後の説諭において、「あなたにとって決して楽な判決ではないけど、あなたなら必ず立ち直れると信じています。これまでかなり強いこだわりをもって生きてきたのですから、これを社会に迷惑をかけないようにするという方向に対してこだわりを持てば、絶対に更生できると思います」と励ましの言葉を掛けていたことが印象に残っている。
②東京地方裁判所刑事第8部平成24年刑(わ)第1594号常習累犯窃盗被告事件,平成24年12月21日判決。
・弁護活動の結果:懲役3年の求刑に対し,懲役1年10月の判決獲得(求刑の6割1分)。
③長野地方裁判所上田支部平成24年(わ)第2号常習累犯窃盗被告事件。
・弁護活動の結果:懲役3年の求刑に対し,懲役1年10月の判決獲得(求刑の6割1分)。DSM-Ⅳ-TRのクレプトマニア診断基準Aについて,正面から合理的な解釈を示した画期的判決。
>>その他,検察官の求刑を大幅に下回る減刑判決多数獲得
8 その他の刑事弁護の実績
上記窃盗事件以外の当事務所の弁護実績の一例をご紹介致します。
①不起訴事例
- ■殺人既遂否認事件
- ・事案の概要:殺人の共同正犯の嫌疑で逮捕勾留された事件。
- ・弁護活動の結果:否認を貫き,不起訴処分を獲得。
- ■大麻取締法違反否認事件
- ・事案の概要:深夜都内に駐車中に職務質問を受け,車内後部座席付近から大麻が発見され現行犯逮捕された事件。被疑者は一貫して被疑事実を否認。運転席から大麻吸引器が発見され,被疑者は「自分しか運転しない」と供述していた。
- ・弁護活動の結果:不起訴
その他,否認事件,自白事件含めて不起訴処分多数獲得
②重大事件の執行猶予判決獲得事例
- ■強盗致傷事件の裁判員裁判。
- ・事案の概要:共犯者2名でスーパーで大量に商品を万引き後,車で逃走した際,走行中の車内に半身を入れて被告人の足を掴んだ保安員を蹴り落とし,一時意識不明の重体にした事件。保安員はその後回復するも,事件の影響で職を失う。
- ・弁護活動の結果:被害店及び保安員と示談をするなどし,弁護側の主張どおりの懲役3年執行猶予5年保護観察付き判決を獲得。
- ■裁判員裁判実施前の傷害致死事件
- ・事案の概要:飲酒をする度に暴れて被告人に暴行を加えていた妻が,事件当日も飲酒して帰宅し,被告人に暴行を加えたため,被告人が布団の上で動かなくなるまで妻を抑えつけたが,翌朝動かない妻に気づき,被告人が救急車を呼んだところ死亡が確認された事件。
- ・弁護活動の結果:正当防衛の主張は排斥されたものの,情状が認められ,執行猶予判決を得た。
③殺意の否定+心神耗弱認定事例
- ■2件の強盗殺人未遂事件で起訴された裁判員裁判事件。
・弁護活動の結果:弁護側の主張どおり,1件について殺意を否定し,強盗傷害罪の認定。また,2件を通じて,犯行時の心神耗弱を認定して大幅に刑が減軽された。なお,この事件は,現在,特に心療内科クリニック等で広く処方されているSSRIの著しい影響でなされた可能性が高いと鑑定された事例である。
その他,全国初の本格的否認事件の裁判員裁判を担当する等,公判弁護経験多数。
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