逮捕から起訴されるまでの手続について、動画で解説いたします。
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【テキスト内容】
1.逮捕とは何か
逮捕は被疑者に対して最初に行われる強制的な身柄拘束処分です。
逮捕には下記の3種類があります。
(1)通常逮捕
これは裁判官から発付された令状(逮捕状)に基づく逮捕です。逮捕の原則的な形態です。
(2)現行犯逮捕
これは、現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者(現行犯人)に対してする無令状での逮捕です。警察官に限らず、一般人でもできます。
なお、「現に罪を行い、又は罪を行い終わった」と言えない場合でも、一定の要件(刑訴法212条2項)を満たす場合は現行犯人とみなされます。これを準現行犯といいます。
万引き、痴漢、暴行、傷害事件等はこの現行犯逮捕がほとんどです。
(3)緊急逮捕
これは一定の重大犯罪(例えば、殺人事件など)で、高度の疑いがあり、緊急性が認められる場合にされる無令状での逮捕です。
2.逮捕されたらどうなるか
一般人の方が現行犯逮捕する場合もありますが、以下は警察官に逮捕された場合の手続についての説明です。
(1)警察官がすること
①犯罪事実の要旨の告知をします。
②弁護人の有無を尋ねます。いない場合は弁護人を選任できることを告知します。
③弁解の機会を与えます。
④留置の必要が無いときはすぐに釈放します。留置の必要があるときは検察官に送致します。
では次の流れを確認しましょう。上記のとおり、まず留置が必要かどうかが判断されます。必要がなければ釈放です。必要があれば、検察官に送致されます。この送致は、逮捕から48時間以内でなければなりません。
(2)検察官がすること
①弁解の機会を与えます。
②留置の必要が無いときはすぐに釈放します。留置の必要があると判断するときは、法の定める制限時間内に、裁判官に勾留を請求するか、公訴を提起します。
法の定める制限時間とは、被疑者を受け取った時から24時間以内かつ当初の拘束から72時間以内です。
では流れを確認していきましょう。先程言ったとおり、ここでも留置の必要が判断されます。そして、必要がなければ釈放されます。留置の必要があれば、検察官は公訴提起又は勾留請求をします。ただ、この段階で公訴提起することはほとんどないと言って良いでしょう。
この公訴提起または勾留請求は、送致から24時間以内で、かつ被疑者を逮捕したときから72時間以内にする必要があります。
勾留請求までトータル最大3日間かかることになりますね。
3.勾留について
勾留とは、被疑者・被告人を拘束する裁判及びその執行をいいます。逮捕後の勾留は、被疑者勾留又は起訴前勾留などと呼びます。
次の要件を満たす必要があります
(1)勾留の理由
以下の要件が必要です。
①被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当の理由があること。
②次のいずれかに該当すること
ⅰ 住居不定
ⅱ 罪証隠滅のおそれがある
ⅲ 逃亡のおそれがある
(2)勾留の必要性
例えば、罰金が予想される軽微な事案は、身柄拘束まですると処分が重すぎるといえます。そのような場合には、勾留の理由があっても、必要性がないとして、勾留請求が却下されることがあります。
なお、被疑事実を否認すると、ほぼ確実にⅱ罪証隠滅の恐れがあるⅲ逃亡のおそれがある、として勾留決定される傾向があります。これが人質司法などと揶揄される所以です。
(3)勾留の手続
被疑者勾留をするためには必ず検察官の請求が必要です。請求が無いのに裁判官の職権で勾留することはできません。また、勾留には必ず逮捕が先行しなければなりません。
そして、裁判官が勾留の決定をするに当たっては、勾留質問がされます。これは、裁判官が被疑者に対して被疑事実を告げて、これに対する陳述を聞く手続です。
この勾留質問で言ったことも後の裁判で証拠になるので、注意が必要です。
4.勾留の流れ
まず、検察官が勾留請求をします。
そして勾留の要件を満たすかどうかが、裁判官によって判断されます。
要件を満たさない場合は釈放です。
満たす場合は勾留決定されます。勾留決定されますと、勾留請求の日から10日間、勾留されることになります。勾留請求の日からカウントする、という点がポイントです。
次に、勾留が満期を迎えるにあたり、勾留を延長する必要があるかどうかが、検察官によって判断されます。
延長の必要が無い場合は釈放されます。
延長の必要がある場合、検察官は裁判官に対し勾留延長請求をします。
この勾留延長は、延長に「やむを得ない事由」がある場合に認められます。具体的には関係者の取調べが終わっていないなど、捜査の必要性が理由として挙げられます。
やむを得ない事由が無い場合、釈放されます。ある場合は勾留延長決定されます。なお、検察官が延長請求すれば、延長が認められるのがほとんどと言ってよいです。
そうすると、更に10日間、勾留期間が延長されます。最初の勾留請求からすると、最大で20日間、勾留されることになります。なお、内乱罪等の事件は更に5日間、勾留期間を再延長することができます。
次に、検察官は、勾留期間延長満期日までに、起訴するか否かを決めます。起訴しない場合は釈放します。
起訴する場合、被疑者勾留は、被告人勾留に自動的に切り替わります。つまり、そのまま身柄を拘束され続けることになります。身柄の拘束を解くには、次に説明する保釈が必要です。
なお、初回の勾留満期日までに、起訴するか否かが決まることもあります。
保釈について
保釈とは、保釈金を納付させて、被告人を暫定的に釈放する制度です。保釈金は最低でも150万円程度必要です。被告人が逃げた等の事由が生じた場合、保釈金は没取されます。余談ですが、この「没取」について、「ボッシュウ」と間違えないように、「ボットリ」などと呼ばれています。保釈は起訴後のみ認められます。起訴前の保釈はありません。
保釈には次の3種類があります。
(1)必要的保釈(権利保釈)
下記の事由に該当しない限り、認められる保釈です。
①被告人が死刑・無期・短期1年以上の懲役または禁固にあたる罪を犯したとき。
要するに重大犯罪の場合は保釈されません。例えば殺人罪等です。
②被告人が前に死刑・無期・長期10年超の懲役又は禁固に当たる罪の有罪宣告を受けたことがあるとき。
重大犯罪の前科があるときも保釈されないということです。
③被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁固にあたる罪を犯したものであるとき。
万引きを繰り返している方などはこれに該当してしまうことがあります。
④被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
⑤被告人が、被害者その他の者に害を加えまたは畏怖させる行為(お礼参り)をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
⑥被告人の氏名又は住居が分からないとき。
否認していると、上記④を理由として保釈が認められないことが多いです。④が保釈の最大の壁となっているのが現実です。
(2)職権保釈(裁量保釈)
これは、前記(1)の必要的保釈(権利保釈)の要件を満たさない場合でも、裁判所の裁量によって許可される保釈です。
(3)義務的保釈
これは、不当に勾留が長引いたときに、請求又は職権でされる保釈です。めったにありません。
6.起訴前に弁護士がやること
(1)身柄解放活動(これは身柄拘束を受けている場合の話です。)
逮捕直後など、検察官がまだ勾留請求する前であれば、勾留請求しないよう、検察官を説得します。勾留請求後であれば、勾留決定しないよう、裁判官を説得します。
勾留決定されてしまった場合は、裁判所に準抗告を申立て、勾留決定を取り消すよう求める等の活動をします。
(2)不起訴に向けた弁護活動
不起訴処分を受けるための弁護活動をします。例えば、被害者のいる犯罪の場合には、被害者と示談し、示談書を検察官に提出します。
身柄拘束事件の場合、上記の示談書は勾留満期日までに提出しなければなりません。なぜなら、検察官は満期日に起訴不起訴の終局処分を決めるからです。
なお、満期日が土日の場合は、その直前の金曜日までに示談書等の提出をしなければなりません。なぜなら、土日は検察庁が休みなので、終局処分は金曜日に決定されるからです。
上記のように制限時間があるので「刑事弁護はスピードが命」などと言われます。当事務所が多く手がけているクレプトマニアの事案の場合、被害者との示談や、医師の方からの意見書の取り寄せ等を短期間で完遂させなければならず、結構大変です。なお、身柄の拘束を受けていない事件(在宅事件)の場合には、検察官も処分を急がないので時間に余裕があります。
7.逮捕から起訴までのスケジュール(身柄拘束事件)
まず、とある月の5日水曜日に逮捕されたとします。
そして、翌6日に検察官に送致され、検察官が勾留請求したとします。
そうすると、翌日には勾留決定が出ます。
この場合の勾留期間の起算日は、勾留請求をした日です。この勾留請求をした日を含めた10日間が勾留期間となります。
そうすると、初回の勾留満期日が15日の土曜日になります。この場合、検察官が勾留を延長するかどうかを決めるのは前日の14日金曜日です。
もし早い段階で弁護士に依頼し、この14日までに被害者と示談をまとめることができた等の事情があれば、勾留延長されずに釈放されることもあります。
勾留延長が決定されますと、さらに10日間勾留されることになります。この場合、満期日は25日の火曜日ということになります。
不起訴処分を得るためには、この日までに示談等をまとめないといけません。現実的には、余裕を見て前日の24日までには示談書や意見書を提出したいところです。
説明は以上です。
ご覧いただきありがとうございました。